ヘリカルCT、ガトリニウム造影MRI

ヘリカルCT、ガトリニウム造影MRI

乳房温存療法とCT、MRI

 早期がんに対する標準治療としては、乳房温存療法が定着しています。つまり、乳房を全部切除するのでなく、病変部だけを部分的に切除します。そうなると、単に良性・悪性の診断だけでなく、がんがどう広がっているか、それをあらかじめ知らなければ、切除する範囲が決められません。この特にヘリカルCTやMRIが活躍します。

ヘリカルCT 

 CTはコンピュータ連動断層撮影の略で、ヘリカルは「らせん」という意味です。従来のCTは人体を輪切りにスキャンしていたのですが、ヘリカルCTはX線を発する管球をらせん状に連続して回転させて撮影することで、りんごの皮むきのように連続スキャンします。また高速で撮影するので、これまでのように患者さんが何回も息を止めてブレを防ぐ必要もありません。1回の息とめで撮影できます。高画質で3次元表示もできますから、小さいがんの発見などに威力を発揮しています。

MRI

MRIの方は、核磁気共鳴画像という名前からもわかるように、磁気を利用しています。放射線を使っていないので被曝の心配はありません。あらゆる角度の輪切り画像が可能で、3次元表示もできます。

造影剤

 乳がんの広がりを見る場合は、CTもMRIも造影剤を利用します。MRIではガドリニウムという薬を造影剤として注射してから撮影しますが、それを特にガドリニウム造影MRIといいます(最近はMRM=MRマンモグラフィーと呼ぶこともあります)。

造影剤の使用法

 がんは2mm以上に成長するためには、新生血管を作って自前の栄養補給路を確保しなければいけません。そこで造影剤を注射して、それが新生血管に到着した頃を見計らい(1分30秒から3分以内)撮影すれば、新生血管から造影剤が染み出してきて、画像に映し出されます。これでがんの広がりがわかります。MRIの場合は、1mmの単位まで映し出すので、新生血管をつくる2mm以上のがんは90%以上わかります。

術前化学療法

 最近では、乳房温存療法ができない大きながんに対して、まず化学療法でがんを縮小させ、乳房温存療法を可能にするという術前化学療法も行われています。この際に、果たしてがんが本当に小さくなったかどうかの判定にもCTやMRIが有用です。  

がんの縮小の仕方

 がんの縮小の仕方には2通りあります。限局縮小型と樹枝状遺残型です。限局縮小型は1ヶ所に固まっていますが、樹枝状遺残型は乳房中に分散しているタイプです。前者なら温存療法が可能ですが、後者ならがんの絶対量は減っていても、範囲としては小さくなっていません。このまま温存療法を行えば断端陽性(切り取った組織の切断面にがん細胞が残っていること。詳しくは次項で書きます)になる可能性があります。従来の画像検査では限局縮小型と樹枝状遺残型を見分けることはできませんでしたが、CTやMRIなら可能です。  ちなみにとある病院では、ガドリニウム造影MRIを導入してから、術後断端陽性率が20%から9.5%に減少しました。

断端陽性

 がんの手術では、がん細胞を残さずとり切ることが非常に重要になります。特に乳房温存療法では、できるだけ小さく、しかもがん細胞は残らず取りきることが求められます、執刀医は、がんを切除したら、切除した組織をその場ですぐ病理医に渡します。病理医は、切除した組織の乳頭側の端を薄く切って、顕微鏡で調べます。なぜ乳頭側かというと、乳がんは乳頭に向かって広がる性質を持っているからです。これを断端検査といいます。  この検査の結果、がん細胞が見つからなければ(断端陰性といいます)切除はそこで終了します。もしがん細胞が見つかった場合は、その場でさらにもう少し大きく切除し、再び断端検査をします。断端陰性にしてから次の段階に進むのが原則です。

血性乳頭分泌について

 かつて血性乳頭分泌の診断は、分泌している乳管に造影剤を入れて乳管造影し、影の有無を調べていました。原理としては胃のバリウム検査と同じです。しかし、MRIでは、新生血管をたくさん持っている乳管があぶりだしのように映し出されるのです。ただし、両性の線維腺腫や乳腺症の一部でもガドリニウムで造影されることがあるので、注意が必要です。



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