センチネルリンパ節生検
郭清する理由 そのⅠ
乳がん手術が始まってから近年まで、わきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)は一貫して郭清されてきました。第1の理由は、乳がんはリンパ節を経由して転移すると考えられていたため、今転移がなくてもとってしまったほうが安心というわけです。胸骨や鎖骨あたりのリンパ節まで郭清していた時代もあります。
郭清する理由 その2
第2の理由は、予後を予測する有力な情報源だったからです。切除した腋窩リンパ節の何個にがんが転移しているかを調べ、化学療法をしましょうとか、放射線をもっと強くしましょうというように術後の治療方針を決めていたのです。腋窩リンパ節以上に有力な情報源がなかったことも事実です。
センチネルリンパ節生検が登場するきっかけ
乳がんは浸潤がんになった段階で、転移の能力を持ち、何個かのがん細胞は、既に全身に散らばっていると考えなければなりません。それらがすべて転移につながるわけではありませんが、リンパ節を郭清しても再発を完全に防ぐことはできません。したがって「どんな場合でも郭清した方が安心」とは言い切れないのです。現に、郭清してもしなくても、遠隔転移の割合や生存率は変わらないことが統計で明らかになっています。
また、たとえば20個のリンパ節をとり、病理検査で1個も転移が見つからなかった場合、その人にとってリンパ節郭清はなんだったのかという疑問が残ります。それどころかリンパ浮腫などの後遺症に一生悩まされる可能性もあるのです。
こうしたことから、画一的なリンパ節郭清に対する見直しが始まり、どうしたら不要な郭清を減らすことができるかが検討され、センチネルリンパ節生検が登場したのです。
リンパ節郭清の後遺症
リンパ節郭清の後遺症については、以下のようなデータが報告されています。手術した方の腕がむくむ(浮腫) 10~18%、手術後5年の時点で手術した側の腕まわりが反対側の腕より4cm以上長い 13.7%、手術後11年の時点で両腕の太さの差が2cm以上ある 24%、手術側の腕の軽度の運動障害(手術前のようには動かない) 16~42%、腕の疼痛 14~25%、知覚異常 70~80%
センチネルリンパ節生検の考え方
以前は、リンパ節は網の目のようになっているからどこに転移するかわからない、と考えられていました。どのtsめ、リンパ節を何十個もとって、とったうち何個に転移しているかなどという検査が行われていたわけです。
しかし最近になり、原発巣(がんが最初に発生した場所)から離れたがん細胞がリンパ液に乗り、最初に流れ着くリンパ節は1~数個に限られることがわかってきました、そのリンパ節を特定し、とってきて調べ、もしも転移がなければそれから先のリンパ節には行っていないと考えることができます。それならリンパ節郭清は必要ありません。これがセンチネルリンパ節生検の考え方です。センチネルとは「見張り」や「前哨」の意味です。
センチネルリンパ節生検の方法
センチネルリンパ節生検は、通常乳房の手術と同時に行われますが、別にセンチネルリンパ節生検だけを外来や短期入院で行う場合もあります。
まずラジオアイソトープという放射性医薬品と、青色の色素をがんの近くに注射します。この2つが道案内約です。これをガンマプロープという一種の金属探知機のような器具で追跡します。センチネルリンパ節の場所が確認できたら、その真上の皮膚を2から3cm切開し、青くなっているセンチネルリンパ節を切除して取り出します。そしてその場で顕微鏡で検査します。もし転移がなければ、そのまま傷口を縫合して終わりです、もし転移があった場合は、傷口を切り足して広げ、通常の腋窩リンパ節郭清を行います。
乳房切除術の場合は、センチネルリンパ節生検用の切開を新たにする必要はありません。同じ傷口からできます。
センチネルリンパ節生検が見つからない場合
不要なリンパ節郭清を減らすセンチネルリンパ節生検にもいくつか問題があります。
まれに、センチネルリンパ節が見つからないことがあります。施設により発見できる確率は異なりますが、これがセンチネルリンパ節だと100%特定できるわけではないのです。見つからない場合は通常のリンパ節郭清を行うのが普通です。
陰性だと出たとしても
センチネルリンパ節生検で下された診断も100%正しいとはいえません。少数とはいえ、陰性――センチネルリンパ節には転移がないと診断されたのに、数ヶ月~数年後にわきの下が腫れてくる人が必ずいるということです。おそらく、この時点でリンパ節郭清を行った場合でも生存率などに違いはないと考えられますが、この結論は、今アメリカで行われている大規模臨床試験の結果待ちの状態です。
診断がくつがえる時
手術中の限られた時間に行われた検査の結果が手術後の最終的な病理診断でくつがえることがあります。つまり、センチネルリンパ節生検の結果が陰性だったので、リンパ節郭清を行わずに手術を終わった人が、2~3週間後に最終的には陽性だったと告げられることになります。この場合は、は、通常のリンパ節郭清を行うか、放射線を照射して様子を見る、あるいは何もしない、などの選択肢が考えられます。
アメリカで実施中
前述のように、現在アメリカで、センチネルリンパ節生検のみで終わった人と、リンパ節郭清をした人の5年生存率を比較する大規模臨床試験が行われています。もし後者の方が成績が良ければ、得遠地寝るリンパ節生検は見直す必要があります。その結果はまだ出ていないのですが、それにもかかわらずアメリカでは、センチネルリンパ節生検を行うケースは85%に達しています(2003年アメリカ乳がん学会調査)。この背景にあるのは、センチネルリンパ節に転移がなければ、その先にもがんはないことを示す多数のデータがあること、更には患者さんの強い意思などが考えられます。
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