乳房再建
アメリカでの考え方
アメリカでは、乳がん治療は乳房が再建されてはじめて完結したといえるという考え方が定着しています。乳房温存療法を受けた患者さんでも、乳房の変形が気になり、再建手術を受ける人もいます。ただ日本では、再建手術はあくまでも患者さんの希望のもとに行われる手術ということから、保険も適用されない場合が多いのです(保険については日本乳癌学会などが申請中)。その点がこれまで説明してきた手術と大きく異なります。再建手術を受ける前には、選択しなければならないことがたくさんあります。大きく言えば、いつ、どんな方法で再建するか、ということです。
「いつ」再建するか
まず「いつ」の問題です。乳房再建手術には、乳がん手術と同時に行う1期再建と、乳がん手術後、時期をおいて再建する2期再建の2つの方法があります。
1期再建 その1
1期再建は、手術が1回で済み、傷跡を再度切り開く必要はありません。しかし一方で、乳がんの告知を受け、平静ではない心の状態で再建のことまで考えるのはなかなか難しいことです。十分なインフォームド・コンセントがないと後で後悔することにもなりかねません。
1期再建 その2
1期再建を行うに際し、費用の問題もあります。再建手術は保険がきかない自由診療扱いになることが多く、現時点では、事由診療と保険診療を組み合わせた「混合診療」は認められていないので、同時に手術すると、乳がんの手術まで自己負担になってしまいます。更に、再建手術を専門とする形成外科医が治療チームに加わっていればいいのですが、そうでない場合は、乳がんの手術を担当する外科医が再建手術も行うことになります。
2期再建
1期再建に対し2期再建は」、確かに2度手術を受けなければなりませんが、乳房切除後にいろいろ考えて準備した上での決断なので、後悔する率も少ないようです。
再建手術には手遅れはありません。いつでもできるのですから、自分の気持ちをよく確かめて、十分に情報収集してからでも遅くありません。
再建手術には手遅れはありません。いつでもできるのですから、自分の気持ちをよく確かめて、十分に情報収集してからでも遅くありません。
再建手術の方法
再建手術の方法には、大きく分けると人工物を挿入する方法と、自分の組織を移植する方法の2つがあります。両方を併用することもあります。
人工物を挿入する方法 その1
人工物を挿入する方法ですが、非定型手術(オーチンクロス法やペイティー法)など比較的切除範囲が狭く、自分の組織(皮膚や筋肉)が十分残っている場合に行われます。使用される人工物とは、ちょうど和菓子に使われる「ぎゅうひ」のようなやわらかい質感のシリコンが一般的です。
シリコン
「ソフトコヒーシプシリコン」というもので、日本ではまだ認可されていないため、個人輸入の形になります。従来のシリコンや生理食塩水バッグは、敗れたりすると中身が散って大変でしたが、これは安全という点でも、感触という点でも優れています。
人工物を挿入する方法 その2
まず、反対側の乳房につりあう大きさまで皮膚を伸ばさなくてはなりません。乳がん手術の傷跡を切開し、風船状の袋(エキスパンダーといいます)をしぼんだ状態で挿入します。そこに生理食塩水を注入し、2週間後にまた注入し、というような方法で少しずつ皮膚を伸ばしていきます。エキスパンダーをはずしても皮膚が後戻りしないことを見極めた上で、エキスパンダーとシリコンを入れ替えます。エキスパンダーの挿入及びシリコンとの入れ替え手術は全身麻酔で行われますが、日帰りでもできます。なお、1期再建の場合は、手術時にエキスパンダーを挿入します。
自分の組織を使用する方法
自分の組織を使用する方法ですが、これには背中の筋肉を使う後背筋皮弁法と下腹部の筋肉を使う腹直筋皮弁法があります。
筋皮弁法とは皮膚+脂肪を筋肉につけて移動させることです。血管や神経は切らずに胸壁まで移動します。
この2つの方法は人口乳房に比べ仕上がりは自然で、ぬくもりを感じる点などが優れています。しかしどちらも、背中あるいは下腹部に新たな傷を作ることになります。傷そのものは一生消えませんが、ブラジャーやショーツに隠れるような位置に傷を作り、形成外科的な特殊な縫い方などで、目立たないようにすることは可能です。
筋皮弁法とは皮膚+脂肪を筋肉につけて移動させることです。血管や神経は切らずに胸壁まで移動します。
この2つの方法は人口乳房に比べ仕上がりは自然で、ぬくもりを感じる点などが優れています。しかしどちらも、背中あるいは下腹部に新たな傷を作ることになります。傷そのものは一生消えませんが、ブラジャーやショーツに隠れるような位置に傷を作り、形成外科的な特殊な縫い方などで、目立たないようにすることは可能です。
後背筋皮弁法
後背筋皮弁法は、人工乳房だけでは再建できない場合、すなわち、残っている皮膚が足りない、もしくは、放射線の照射で皮膚が硬くなって伸びないなどの場合、人工物を入れるのに抵抗がある場合などに行われます。背中の皮膚、脂肪、筋肉を乳房の欠損した部分に移植しますが、背中は筋肉も脂肪も薄いので人工乳房を併用することもあります。手術には数時間かかり、1週間から10日前後の入院が必要です。
腹直筋皮弁法
腹直筋皮弁法も、後背筋皮弁法と同じく皮膚や筋肉の欠損が大きい場合、もしくは人工物を入れるのに抵抗がある場合などに行われますが、再建手術の中ではもっとも患者さんの負担が大きい手術なので、本人の強い希望がなければ行いません。出来上がった乳房は柔らかく自然です。入院は最低でも2週間、普通の生活に戻るのに1~3ヶ月かかります。なお、腹直筋(下腹部の筋肉)の一部を使用するだけなので、腹筋運動に支障はきたしません。
乳頭・乳輪について
乳頭、乳輪の再建は、乳房の再建が終わってから数ヵ月後に行うのが一般的です。健康な側の乳房と位置や形をそろえるためには、やはり再建した乳房の形が落ち着いてからがいいでしょう。
乳頭の再建
乳頭は、健康な側の乳頭の一部を移植したり、それができない場合は、乳頭にあたる部分の皮膚を立体的に盛り上げてつくるなどの方法があります。
乳輪の再建
乳輪は反対側の乳輪からの植皮や刺青の方法でつくります。鼠蹊部から植皮することもありますが、色が合わない、長年の間に色あせるなどの問題点があります。
健康保険がきく手術
乳頭・乳輪の再建では、反対側の乳頭・乳輪の半分を移植するという一般的な方法については、健康保険が適用されます。
乳房再建の合併症
人工物を挿入した場合には、被膜拘縮(ひまくこうしゅく)という合併症が起こることがあります。人工物に対する自己防衛反応として、挿入物のまわりに被膜が形成されるのですが、その被膜が硬くなるとカプセルのようになってしまうのです。以前は5人に1人の割合でこの被膜拘縮が見られましたが、挿入するシリコンが改良され、予防することができるようになりました。ただし、術後、入浴時のマッサージは必要です。
1期再建の場合に多いのですが、炎症が治まらなかったりして、人工物を取り除かなければならない場合もあります。
自分の組織を使った再建で多いのは、移植した組織が血行障害のために壊死してしまうことです。この合併症のハイリスクグループは喫煙者、糖尿病や肥満のひとなどです。
1期再建の場合に多いのですが、炎症が治まらなかったりして、人工物を取り除かなければならない場合もあります。
自分の組織を使った再建で多いのは、移植した組織が血行障害のために壊死してしまうことです。この合併症のハイリスクグループは喫煙者、糖尿病や肥満のひとなどです。
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