乳房切除術
乳房温存療法ができない場合
乳房温存療法ができない場合、すなわちがんを残さず取りきろうとすると、乳房の変形が大きくなって部分的に残す意味がない場合、あるいは乳管の中をがんが這っていて、くり抜くような切除が難しい場合などは、乳房をすべて切除することになります。そのほうが転移の可能性が少なくなるし、希望者には乳房再建術を行うこともできます。
乳房切除術について
乳房を切除する手術を総称して乳房切除術といいますが、いくつかの術式があります。違いは、胸の筋肉をどこまで残すかということと、リンパ節郭清をどこまで行うか、その組み合わせです。
単純乳房切除術
単純乳房切除術は大胸筋、小胸筋は残し、リンパ節についてはセンチネルリンパ節生検を行います。
大胸筋
左手を腰にあて、強く押し付けてください。そして右手で]左のわきの下を触ってください。腕と胸壁をつないでいる筋肉が大胸筋です。これを乳房ごと切除すると皮膚を透かして肋骨が浮き出ます。また、腕を動かす筋肉なので、手を上げて棚の物を取る、髪をとかすなどの日常的な動作に支障をきたします。
オーチンクロス手術
オーチンクロス手術は、大胸筋・小胸筋は残しますが、リンパ節はレベル2(わきの下から鎖骨へ向かって1・2・3とレベルが上がります)までの郭清を基本とします。乳房切除ではこの手術が標準治療といっていいでしょう。
ペイティー手術
ペイティー手術は大胸筋は残し、小胸筋は切除します。リンパ節はレベル3まで郭清します(「オーチンクロス手術」参照)。
ハルステッド手術
ハルステッド手術は大胸筋、小胸筋ともに切除し、わきの下のリンパ節も郭清します。長い間標準治療だったことから、定型乳房切除術とも呼ばれ、これに対し、それ以外の乳房切除術を非定型乳房切除術と呼ぶことがあります。
乳房切除術の対象
手術の対象となるのは一般的に病期(ステージ)ⅢAまでです。ⅢB、ⅢCの進行乳がんに対する手術の有効性ははっきりしません。Ⅳ期の乳がんに対する手術は意味がない、とされています。
内視鏡手術
1990年代は内視鏡による手術が大いに進歩しました。内視鏡手術は傷口が小さくて済むので、治りが早く、術後の痛みも軽減されます。とくに胆嚢の摘出など消火器外科領域での普及はめざましいものがありました。乳腺外科領域でもわきの下や乳輪のそばを目立たないように小さく切開し、そこから内視鏡を挿入する方法が各種考案されています。多発及び乳管内にがんが分布している症例の全部摘出する手術、乳房切除と同時に乳房再建を行う手術などで、特に有用だとされています。保険も適用されます。
ただし、内視鏡手術は内視鏡を使わずに行う手術に比べて時間がかかります。そのためたくさんの手術を手がける専門病院などでは導入していない施設もあります。内視鏡手術を希望する場合は、事前に情報を得ることが必要です。
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